180度をこえる夕陽のために ホワイトモノリス

【第4回モダンリビング大賞】受賞作

ホワイトモノリス

 

西に大村湾を望むなだらかな斜面。その頂に敷地はあります。裏山の森を抜けると












視界が開けると思いきや、眼前には視界一杯に大きなコンクリートの壁が立ちはだかります。











しかしこの壁に取り付いたオレンジ色の扉を開けると、今度は一気に180度を超える眺望の中に身が投げ出されてしまうのです。
















写真右側にオレンジ扉があり、それをあけると、この純粋に眺望を味わうためだけの白い床:エントランス・デッキに出てくるわけです。手摺りは視界を遮らぬよう2段下がったところに取り付けています。










 

エントランス・デッキ見上げ(北側外観)

 

ここでようやく建築が全貌を現します。










 

南側外観

 

丸穴の空いた床版:モノリスがメインフロアになります。屋根は山側の2枚のコンクリート壁から片持ちで張り出しており、海側や室内には眺望を損なう柱は一切はありません。(台風時に屋根がばたつかぬよう、先端は念のためステンレスの細い棒鋼で下に引っ張っています)







 

 

さて、エントランス・デッキから左を振り向くと、やっと建物へのアプローチが見えてきます。(写真は工事中のものです)










 

 

ガラスの玄関扉を開けると、腰の高さにメインフロアの床版が見えます。こうして少し高いところに配することによって、モノリスの存在感を高め、そこに登ってゆく高揚感を演出しようとしているのです。(右に見える黒い塊はオーナーの食器コレクションを収納するギャラリーですが、これによって一度眺めを隠し、圧迫感を感じさせて、モノリスに登り切った時の開放感を更に強めています)





 

リビングから南側を見る

 

片持ちの屋根の下にはサッシがありません。15ミリという分厚い強化ガラスを用いることで、目障りな枠をなくすことが可能になりました。










 

リビングから玄関側を振り返る

 

左に見えるのは絶景キッチン、中央は食器ギャラリー、そして右側の赤いT字窓の向こうは、後述する暖炉コーナーです。










 

 

この夕陽を味わうために計画されたのが、ホワイト・モノリスなのです。それまで賑やかにおしゃべりしていた人たちも、日没の瞬間は誰もが口をつぐみ、じっと日の沈むのを見つめてしまいます。









 

 

床には純白タイルの角を落としてLEDを埋め込んであります。夜になると










 

 

LEDの間隔は80cmピッチ、端のLEDとガラスとの間は40cm。結果、LEDのグリッドはガラスに反射して、床版を超えて延びてゆき、空間は遙かに夜景の中へと一体化するのです。









 

リビング山側の暖炉コーナー

 

リビングの圧倒的な開放感とは対比的に、山側には壁に囲われた小さなコーナーを設けました。真赤なソファに身を落とし、暖炉に火を点ければ、このうえなく安らげることでしょう。








 

暖炉コーナーから海を見る

「人が最も安らぐ形---そのひとつは、洞窟にあると思います。厚い岩山を背にして、狭く暗い中に座り、広く明るい外界を見遙かす---そこには身を強固に守られる安堵感と、想像力をのびやかに飛翔させる快楽があります。」と三浦の別荘で考えていたことが、ここでやっと完全な形になりました。











地階への階段

暖炉コーナー脇から地階に下りると、プライベートエリアになります。寝室・主寝室・和室・浴室が広い視界と落ち着いた囲壁をもって配されています。

















主寝室から海への眺め

 

 

 

 

 

 

浴室

浴槽は壁を切り下げた中に、外に飛び出すように設け、洗面室の鏡はステンレスワイヤーで吊って宙に浮かせています。(ガラスと鏡の間にはブラインドが下りるように配慮しています)









空中露天風呂

建物の南側に独立して空中露天風呂を設けました。階段を上りきると、絶景を独り占めして入浴できます。










空中露天風呂からの眺め

浴槽は透明の合わせガラス。これは入浴姿を人に見せるためではありません。浴槽を透明にすることによって、湯は宙に浮いた水の塊となり、そこに入ってみるのが私の夢だったのです。さらに湯を透かして見える風景は、不思議な浮遊感覚をますます強めてくれます。













空中露天風呂の水面

浴槽上辺は完全に水平になるよう取り付けられており、湯をすり切り一杯にはると、風呂の湯面が海面と一体化して、大海原で入浴しているかのような感覚を得られます。








空撮遠景

左側にひろがる海に向かってなだらかに下る丘陵地のなか、右下にホワイトモノリスが見えます。










低空から北西方向を見る。海に向かって胸を張り、大きく地形へと拡がってゆく伸びやかさが感じられればと思います。










南西からの見下ろし。ドローイング・パースと見比べてみてください。














赤い扉を入った所がエントランスデッキになりますが、現在その前に150席の円形劇場を計画しています。











所在地 長崎県大村市
構造規模 地階・1階:RC造、屋根:S造
設計 榎本弘之建築研究所
担当 榎本弘之・井黒隆雄
構造設計 梅澤良三建築構造研究所
敷地面積 4554.77m2
建築面積 118.11m2
延床面積 189.94m2
施工 (株)平山組
設計期間 2003.05~2004.06
施工期間 2004.10~2005.07

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